【長】純白花嫁

 私はここまでですのでと言って、案内をしてくれた彼は、そそくさと去っていった。
 どうすればいいのか困っていると、フロウが先に進んだ。勝手にしてもいいの!?

「あなたが今回保護された神寵姫……私のこと覚えてますか」

 部屋の奥にひっそりと佇む女性に話しかけるフロウ。
 いや、女性というよりも少女? わたしと同じくらいかな、でもどこか儚げに見える人だ。
 ふわふわの栗色の髪は、整えられてはいるもののどこか無造作であり、茶色の瞳は生気が感じられない。
 巫女というよりも姫という言葉が似合う。

「あなたは、えっとだれでしたっけ」
「本当に記憶がないのね、覚えていないなんて。それに……」

 姿だけでなく、声までか細く小さい。そんな彼女に対して、質問攻めをするフロウ。
 それに対して、ほとんど疑問詞で返す。
 まるで、話がかみ合っていない。このままじゃ意味がない。

 一通り質問した後、フロウは黙り込む。

「合歓、このままじゃ埒が明かないから、事情を知る者に聞いてきます。あなたは彼女の話し相手をしてください」

 小さな声で耳打ちをして、堂々と出て行った。だれが相手でも、威厳を保ち続ける彼女の姿は部屋の主よりもそれっぽい。
 そんなこと言われても、どうすればいいのとフロウに聞くのに、もうその姿が見えなくて焦る。
 部屋に二人きりになり、何とも言えない空気が張り詰める。

「あ、えっと、あなたはナーディアさん?」

 それが前もって聞いていた神寵姫の名前だった。だけど、彼女は予想外の返事をする。

「……だれそれ。それよりもあなたは」