ステージのそでから、美術担当の樋口がキョロキョロしながら現れた。

「あのう、誰か裏のテーブルに置いてあったナイフ知りません?果物を切ろうと思って持ってきたんですけど」

ナイフ。

僕は自分が握っていたサーベルを見た。

作りものにしてはリアルすぎる血。ポタポタと滴り落ちる。

そういえば、さっきから魔王メドナ役の坂本が倒れ込んだままだ。


…そんな。

僕はヘナヘナと座り込み、叫んだ。

「た、大変だ!救急車を呼んでくれえ!」