ショート・ミステリーズ!短編集その2

中村は目をこすった。

道路の先で、誰かが手を挙げているような気がしたからだ。

この先は、墓地…

黒い人影はだんだん近付いてきた。本当に人がいた。

中村は車を停め、後部座席のドアを開ける。

スーツ姿の若い男が乗り込んできた。びしょびしょである。

「いやあ、助かった」

中村はルームミラー越しに男を見た。
「どちらまで?」

「東京駅までお願いします」

タクシーは走り始めた。