パリ・ローマ幻想紀行

「そうか、そのように見える者には、嘆かわしいが、見えない者にはそれでよいのじゃ」
「同時代でありながら、フォロ・ロマーノは、現在では遺跡であり、サンピエトロ大聖堂は現在においてもなお生きています。この二つの対象は、人類の歴史と、滅びることが解りながら、権力、地位、富を棄てることができない、人間としてどうすることもできない世界が凝縮されているように見えます。これから二千年、三千年というスパンで見たときに、サンピエトロ大聖堂も遺跡になるのが見えます。私には、フォロ・ロマーノの遺跡とサンピエトロ大聖堂との間には、何の落差も感じません」
「そうか、そのように見えるか。私とてどうすることもできぬのじゃ。山の麓から山の頂を眺める者にはのぉ。質素な生活に甘んじる者のように、山に登ってそこから下界の景色を眺めて欲しいのじゃ」