パリ・ローマ幻想紀行

「権力社会が存在する以上、この構図は現代においても変わるところはないような気がします。ただ当時は、市民権と言う誰が見ても白黒がはっきりした対照があったから、あなたのことばを忠実に実践し、質素な生活に甘んじることができたのです。この段階においては、教皇領というものはなかったし、サンピエトロ大聖堂もなかった。人間として、殺される者とそれを見て興奮する者があってはならないという、純粋な気持ちがあって、初めてあなたのことばを見ることができたのです。そう、あなたのことばを見て、山に登ろうとしたのです。そこには、権力意識は全くないのです」
「そうじゃの」
「この市民権と言う強者と弱者の白黒がはっきりした権力社会ですら、これが滅びるまでに千年以上という長い年月がかかりました。教皇制も権力社会という点では少しも変わるところはありません。強者と弱者の構図は全く変わるところはありません。ただ違うのは、市民権ほどに白黒がはっきりしていないということです。それだけ人々の純粋な心が薄れるのです。こちらの方が質が悪いと思います」