パリ・ローマ幻想紀行

(5)フォロ・ロマーノ
 このクーポラの空間を出て、左側の柱廊の最後の柱のところに集まるように、添乗員さんの指示があった。観光バスの駐車場がないので、時間厳守である。幸いなことに、ここには伊沙子さんが貪欲に歩き回る所は無かった。時間通りに路上で待っていたバスに乗り込んだ。次は円形競技場コロッセオである。コロッセオに行く途中で昼食を取り、ベネチアングラスの店に入った。東京のような近代的な建物ではなく、石造りの建物である。また、ウインドの飾りつけはなく、土地の人でなければ、ベネチアングラスの店に気付かないで、通り過ぎるほどである。レストランもそうであったように、ローマの町全体がそうであった。店の中に入って、昔と今とが建物の入口で、剃刀で切ったように仕切られていた。
 店内には、目の醒めるようなベネチアングラスが、照明に照らされて並べられていた。先ず、一行はベネチアングラスの一般的な説明を受けて、店内に散らばった。店員さんはローマの綺麗な女性ばかりで、日本語はいづれも品格があって流暢である。先ず、この綺麗な店員さんをビデオカメラに収める。レンズを通して、伊沙子さんを追う。伊沙子さんは時間の大半を費やして、丹念に、かつ、貪欲に店内を回る。伊沙子さんには、時間配分の意識は微塵にもない。そして、ワイングラスの棚の前で立ち止まった。
「これどうかしら」