パリ・ローマ幻想紀行

「あなたはよく我慢をしましたね」
「あなたには、私が見える筈じゃが」
「はい、見えます。我慢じゃないことが見えます。イエスが自分の見ている景色を人に見せることができない、それが見えます。芸術の死が見えます」
「そうかそのように見えるか」
「教皇ユリウス二世が、何時完成するんだ、と怒りを込めてあなたに言ったことに対して、あなたは、私自身がこの作品に満足した時です、と答えたあなたのことばの中に、そのようなあなたが見えます」
「そうか」
「芸術、つまり自分の心、自分のことばの表現には、無限の時が必要なのですね。人に強要されない、無限のものが必要なのですね」
「その通りじゃよ」
「この作品は、あなたにとっては、未完成ですね」
「そのように見えるか」
「はい、そのように見えます」
「どのあたりじゃ」