パリ・ローマ幻想紀行

(3)ラオコーンとの対話
 また、周りの雑音が急になくなった。私はラオコーンの前に立っていた。戦うヘラクレスの姿を現したと想像されているラオコーンは、芸術の臭いを感じさせる。中央にヘラクレスと思われる大男、その両側にヘラクレスの腰の辺りまでしかない小さな男性を配置して、ヘラクレスの強さをまず強調し、この三人の男性が蛇に巻き付かれている構図である。このラオコーンは、アポロニオスの作だと言われている。
「アポロニオス、あなたのことばを教えてください」
「このラオコーンを見てあなたはどのようなことばが浮ぶかの」
「はい、私には人間として、どうすることもできない嘆きを感じます」
「ホホ、どのような嘆きじゃ」
「イエスが十字架にかけられた嘆きです」
「それは悲しみか」
「いいえ、違います。イエスが見ている素晴らしい景色を、人に見せることができない嘆きです。人間としてどうすることもできない嘆きです」
「どの辺りにそのことばが見えるのじゃ」