パリ・ローマ幻想紀行

「そうじゃ、戦は滅びるが、永遠の生命力は滅びることはないからのぉ」
「あなたは左の頬を向けて十字架に掛けられました。激しい心の葛藤をすることによって、自分自身が救われると言う景色が見えます。心の葛藤が激しければ激しいほど表面は穏やかになります。十字架を背負ったあなたのこの静寂の姿は、人々には見えないのです。罪を犯した哀れな姿にしか見えないのです。悲しい姿にしか見えないのです。敵を愛し、自分を迫害する者の為に祈りなさいと言うことばが、あなたの静寂の姿の中に見えます」
「おお、そうか」
「天国と地獄があると思いますか」
「何じゃ、その天国と地獄というのは」
「いい行いをした者は天国に召され、悪い行いをした者は地獄に落ちるということです」
「あなたはどのように見えるかのぉ」
「人を人として認める景色には、善悪はないように見えます。ましてや、あなたのように、自然界を眺める景色には、何が善で何が悪か区別がつかないように見えます。善はすなわち悪であり、悪すなわち善に見えます」
「その通りじゃ、悪人から見た善人は悪人じゃからのぉ」
「あなたの見る素晴らしい景色は、花園に包まれ、天使が舞う楽園から、雑念をなくした静寂の世界だからです」