この辺りって、昼間でも人やクルマの行き来が少ない。

 夜なんか不気味なぐらい静かだし、今の時間帯でもあまり見かけない。

 そんな静寂の中をオレは1人、妄想(何の妄想かなァ?)に浸りながら歩く。

 すると、或る邸宅の前に来た時…

 ワオォォォォォーッ!

 オオーッ!

 静寂を破る、哺乳類生命体のカン高い鳴き声!

 ヤツだ!

 毎日、オレがここを通る度にすっ飛んで来て、吠えまくる。

 ヤツは四つ足で歩く、全身白毛で覆われた地球内生物。

 尻尾を持ち、耳がピーンと尖った奇怪(?)な生き物だ。

 ヤツらのような種族はワンと言う以外、言葉を発しない。

 こちらから…

「おはようございます。イイ天気ですネェ」と、挨拶したって…

「ワン」って、返って来るだけだ。

 人類種族の生物学説上では、ヤツらは『犬』と呼ばれている。

 しかも、外来種のようだ。

 オレが家の門の前に来ると…

 ワンッ!! ワンッ!!
 ワンッ!! ワンッ!!

 ヤツめ、狂ったように走って来てはオレに向かって吠えまくるんだ。

 その吠え方なんて、フツーじゃない。

 明らかに、オレを敵視している。

 コイツ…

 オレに対して宣戦布告しているな?

 オレはその場に立ち止まって、足をトンと地面を叩いてみる。

 すると…

 ワッ!! ワッ!! ワッ!! ワッ!! ワッ!! ワッ!! ワッ!!

 コイツめ、歯剥き出して興奮するんだ。

「バカ犬めが!」

 オレは笑うだけ。