私はそそくさと自分の鞄を肩にかけ、出入口へと向かった。



「あっ、あのっ、私っ、かっ、か、帰ります!」

「どうしたの?何か飲んで行くといいよ、お金はとらないから」

「い、いえっ、大丈夫ですっ!」

「遠慮しないでいーんだよ?それとも何か用事あんの?」

「あっ、いえ、あの…っ」



マスターとクララさんの優しさは、十分有難いんですが…



「シロミちゃんシロミちゃん」

「えっ」



真崎くんに呼ばれて、声のした方を振り向くと…



「えいっ!」



―ピトッ



ペーターの前足が、私の肩に………



「いやぁあああ!!!!!」



私、犬って苦手なのー!



「あはは、シロミちゃんおもしれーっ!えいっ、えいっ」

「きゃー!ごめんなさい許してぇっ!」



店内を逃げ回る私を、真崎くんはペーターを抱き抱えたままひたすら追い掛けた。