「梓」

隣の紀香は微笑みながら

「やっぱり、柏原くんの事、好きなんだね…今も」

「紀香…」

泣きそうなのを我慢した。

「今の柏原くんは、昔の柏原くんじゃないから…
梓を助けてくれるとは限らないけど…」

紀香の言葉に私は首を横に振って

「いいの。
紀香、連れて来てくれてありがとう」

私は精一杯、笑ってみせた。

「祥ちゃんが昔と変わらずバイクに乗って頑張ってるのを見て、安心したから」

口元を上に上げる。

「一生懸命に活動している祥ちゃんを見たら、私も田舎に帰ってまた頑張ろうって思うから」

私はそう言って顔を覆う。

泣くつもりはなかったけど。

多分、祥ちゃんとこのまま別れたら。

もう、絶対に会えなくなるのがわかっているから。