俺は母ちゃんの妹の子供。

産まれてすぐに母ちゃん夫婦に預けられて。

本当の母親は失踪した。

もちろん、父親が誰かもわからない。



小さい頃から真実は教えられていた。

けど。

5歳上の兄ちゃん…実際はイトコだけど。

兄ちゃんはこう言った。

「血の繋がりなんか、関係ない。
祥太郎は僕の弟だから。
誰に何を言われても」

俺も兄ちゃんはあの兄ちゃんしかいない。

…でも、その兄ちゃんも18歳で亡くなり、血の全く繋がっていない父さんも。

その3年半後に病気で、死んだ。



そんな中、彼女だった梓は武紀に恋したみたいで。

梓には幸せになって欲しかったから。

俺は身を引いたんだ。

日本では有名になんかなれない二輪ライダーよりも。

無名でも少しずつ有名になっている野球選手と一緒になる方が。

梓にとっては幸せだと思った。





頼れる人々の死と。

大好きな女の子との別れ。

あんな喪失感はもう二度とごめんだね。