晶は呆然と立ち尽くしていた。

燃える……燃えてしまう……兄が……。

貴子は放心したように座り込んでいる。
利那は拓海の名前を呼びつづけながら気を失い救急車で運ばれた。

何故こんな事になってしまったのか?何が狂ってしまったのか……。

全てが晶には大きすぎて涙も出ない。

隣に立ち尽くす真澄は黙っていた。
全てが分かったような気がしたが、何も証拠は無い。
ならばこれ以上晶を苦しめる事も悲しませる事もない。

自分さえ黙っていればいいのだ。この事は死ぬまで封印するつもりだった。

「ねえ真澄……」

「なに?」

「さっき何言おうとしたの?」

「……忘れちゃった」


そう言って真澄は晶を抱きしめた。
晶が激しく震えながら泣き出す。

悲鳴にも似た泣き声に、真澄は炎の中から拓海の絶叫が重なって聞えたような気がした。