冷たくて、温かい。 不思議な感覚に包まれながら、乳白色の海を漂っていた。 ふわりと、熟した果実から溢れでるような甘い匂いが鼻を掠めて。 闇ばかりだった心が、だんだんと透き通っていく感覚を覚えた。 ……死後の世界は、もっと真っ暗で、悲惨なものだと思っていた。 ぼんやりと、そんな事を思う。 そうして、心の中で自嘲気味に笑った。 それなら、きっと。 これは悪夢を見る前の、一瞬の幸せに過ぎないのかもしれない。 ……だって、私には そんな世界に行ける資格など、無いのだから。 .