「あんたが人助けなんてねえ」

閉められたカーテンの向こう、ぽつりと、そう呟くのが聞こえた。


「……見捨てるわけにはいかないだろう」

「まあそうだけど。」


彼女を着替えさせているのか、衣擦れの音が、耳をつつく。

ときどき、か細い悲鳴をあげる椅子に座りなおして、布一枚の壁の向こうの千代に言う。


「…熱は」

「結構あるわね…でも、大丈夫よ。暫く休めば下がるわ」


そう言い終わらないうちに、カーテンが開かれて。

聴診器をつけた彼女は、むつかしい顔のまま続けた。


「取り敢えず、あんたの家に連れて行くわよ」