台所に戻り、薄い硝子のコップに水を入れて玄関まで戻る。
私と目が合うと同時に少女を背負いなおした藤士は、玄関から上がり、のっそりとした動きで歩いていく。

行先は、少女に与えたあの部屋だろう。







部屋につき、畳んであった布団を広げた藤士は、少女をしずかにそこに寝かせた。

ほんの数秒の間だっただろうか、藤士は少女の肩のすぐ横あたりにひざをつき、顔を覗き込んだ。
次いで心配げな目線がふとこちらに向けられて、意図を図ってコップを手に取り彼の手に渡した。


藤士は、それに微笑んでうなずくと、少女のかさかさの唇に指先を這わせて、次にコップのふちをその口につけた。

だが、水はその小さな口の中に入ることはなく、こけた頬を伝っていってしまった。


それに眉を寄せた藤士はしばし黙り込み、そして自らの口に水を含んだ。



 ̄ ̄……ああ、


苛々、する。



少女に、上から覆いかぶさるようにかがみこんだ藤士を捉えて、眉間に深くしわが寄るのを自覚しつつ、今更ながら私はそこから線をそらした。


だがもうその間には−重なり合ったふたつの唇を見てしまったのだが。