そうっと近づいて、物体の正体を確認する。 黒い塊は、はじめ何かの動物−おそらく、大きさから大型の犬ではないかと思われたが、微かに動くのが見え、僕は目を見開いて絶句した。 長い黒髪、白いというよりは蒼白な肌、寒さのせいなのであろう、紫色に変色した、震える唇。 華奢な体はぎゅうっと縮こまり、纏った黒いぼろぼろの着物は、雨に濡れてべったりと体に張り付いている。 そこに居たのは、どう見ても十六、七ほどの 少女、だった。 .