びりびりと伝わるそれに思わず顔を歪めた僕に、少女は怯えたような表情をして自分の頭を両腕で抱え込んだ。
「やめて!!やめて下さい!何もしていません!何も触っていません!謝ります、謝りますからお願いします!!許してください!許してください!!」
だんだんと声が掠れ、最後のほうはもう、嗚咽にまじって何を言っているのかは聞き取れない。
涙声で同じ言葉を繰り返した彼女は、小さく縮こまって搾り出すように言った。
「許して…ください、お願いします…」
深い沈黙が、降りる。
僕は暫し、その場に縫い付けられたように動けないまま、早鐘を打つ心臓を抑え、冷や汗が浮かぶ額に手の甲を当てた。
…今のは、何だったのだろうか。
―やめてください。
―許してください。
……いったいこの少女は何を抱えているのだ。
小さく息を吐き、蹲る少女にしずかに近づく。
数歩前で足を止めてしゃがみこみ、耳を澄ませば再び、少女の寝息が聞こえた。
先ほど見えたものと同じ穏やかな寝顔が、開け放たれた窓から入り込む月明かりに照らされている。
伏せられたその目の縁に、きらりと光るものが見えて。
それが涙であることに気付いた僕は、冷えた胸が、哀しみで満たされるのを感じた。
無意識のうちに腕が持ち上がって、強張る指先が少女の髪の間をぎこちない動きですべる。
触れていたところから、熱くなった。
理由もなく、思った。
この子を守りたい、と。