「ああ、よかった。

昨日、随分うなされていたので、心配していたんです。

何処か、痛いところはありませんか?」


そう言って笑みは崩さないまま、正座している私と視線を合わせるように畳に肩膝を立てて、顔を覗きこんでくる。

反射的に顔を背けて、眉間にギュッと皺を寄せた。


……何だか、凄く

この男からは、私の苦手な匂いがした。

甘い甘い砂糖水を、無理矢理飲まされているような気分だ。


――気持ちが、悪い。



「……まあ、そんな話は後でもいいじゃないか。それよりも、とっとと飯食いな」



空気を察してか背後から聞こえた千代のその声に、私は内心、ほっと胸を撫で下ろした。