「峰谷藤士って、知ってる?」 暫く考え込んだ様子で俯いていた千代は、ぱっと顔を上げるとそう言って。 …みねや、ふじ。 聞いた事のない響きに、私は小さく首を横に振った。 私の反応が余程意外なものだったのか、千代は大きく目を見開いて、しばらくそのまま固まっていた。 そして、私が眉を寄せて首を傾げると、急に目が覚めたような顔になり小さく声を漏らし、言った。 「最近、新星だとかなんだとか騒がれている作家さ。 ……あんたを拾った“馬鹿”だよ」 .