湯気が立ち上る、ご飯と味噌汁。
皿に盛られたおかず。


「ほんとにアンタって、不健康なやせようよねえ。若いんだからたくさん食べなきゃ駄目よ」

そう言って、次々と、卓の上に料理を出してきた女は

英田千代、と名乗った。

「長生きするようにってつけられた名なんだ。まあその名の通り、今まで風邪のひとつもひいたことがないんだけどね。

因みにあの馬鹿とは幼馴染で、近くで診療所を開いてる」


そう話した千代は、私が何の反応も示さないことに、少しだけ不満げになり……やがて、口を閉ざした。



わたしにとっては、都合の良いことだった。

ききたいことがあったのだ。



「“お人よしの馬鹿”って、誰」



二人だけの食卓に

沈黙が、降りた。