がばりと起き上がると、激しい痛みがこめかみに走り、視界が大きく揺れて、ぐらりと上体が倒れた。

伸びてきた女の白い腕に、体を支えられて。

私は咄嗟に、その手を払った。

「……ちょっとあんた」

払われたほうの手にもう片方の手を重ね、険しい顔でこちらを睨んでくる女を、キッと睨み付ける。

女は更に眉間に皺を寄せて、私との距離を詰めて来た。

溜息をついて、薄い唇が動く。

「あんたね…助けた礼とかないの?」


その言葉に、引き攣った笑いが漏れた。

おそらく私は、あの場所でそのまま気を失ったのだろう。

……そして

野垂れ死ぬ前に、この女に見つかったのだ。

だが

だから、何だというのだ。

助けただと?

その礼を言えだと?

……下らない。
いったい、何に感謝するというのか。


「……私は、死にたかったんだ」

そう吐き捨てて、覚束ない足取りで襖へと向かった。

背後から女が何か言ってきたが、振り返らずに、私にかまうなと返した。



とにかく、ここから出ていきたかった。


ここの空気も

女も

どうにも、息苦しい。