実花さんが不思議そうな顔をしている
首を横にかしげて、瞬きを多くしていた

どうしてあんな顔しているのだろうか?
見慣れない従業員なのか?

「あの……どちら様ですか?」

疑惑の視線を送りながら、実花さんが口を開いた

「え?」

男が目を見開いた

「もしかして山中洋介さん?」

「は?」

一瞬だけ男の顔色が変わったが
すぐに口の片方を緩めると、首を横にふって立ち上がった

「いえ、料理長の持田 小次郎です」

持田が頭を軽く下げた

「え? 料理長は清水よ
私が指名したんだから」

「いえ、本日突然、清水から連絡ありまして…体調不良のため交代して欲しいと
金田社長にはご連絡したのでが……実花様には連絡が遅くなりました
申し訳ありません」

持田が目じりをさげると、申し訳なさそうに謝った

「そうなの……なら仕方がないわね
清水はおいしい料理を作るのに、体調管理は下手だから」