この人が悪いわけじゃないのに、私が出会った最低な教師の話をした。
「あんたみたいな先生、いなかった。私が登校拒否しても誰も来てくれなかった」
本当は待っていた。
学校の先生なんて大嫌いだったけど、心配してくれるのを待っていた。
「僕だったらしつこいくらいに来たでしょうね」
この人も昔、私のような生徒を受け持ったことがあると言った。
その子は幸せだっただろう。
ちゃんと目を見て、私の心の中を知ろうとしてくれるから。
この人は。
私はチラっと見ては、また視線を外す。
新垣って言ったっけ?
「あんた沖縄の人?」
「いえいえ。先祖は沖縄にいたようですが僕は違います」
濃い顔だし色が黒い。
「色黒いね」
「ははは。体育を受け持ってるんです。だから黒いんです。ま、地黒だけどね」
人の心を掴むのがうまい。
こんな風に親しげに話されると、初めて会った気がしない。

