「ミキオ、こっち来れば?」
他のメンバーに呼ばれたミキオは、だるそうに私の隣に座った。
「俺のどこが好きって?」
ミキオはニコリともせずに、私の顔をじっと見つめる。
「寂しそうなところ」
私を睨むミキオ。
私の腕を掴んで、立ちあがった。
「ちょっと顔かせや」
殴られるのかと思った。
ライブハウスの奥の部屋に連れていかれた。
そこにはなぐり書きしたノートが散らばっていた。
「俺が寂しいってどうしてわかった?」
落書きだらけの壁にもたれかかったミキオは、そう言って、また寂しい顔をした。
「私と似てるから」
私は机の上に置かれたノートに目を移した。
黒く塗りつぶしたページ。
「お前のおかげでまた詩が書けそうだな。連絡先、そこに書いて」
私は言われるままに、携帯の番号とメールアドレスをノートの端に書いた。