私は、トイレの鏡を見て、はっとした。


おでこは油っぽいし、髪もボサボサ……



とりあえず化粧直しをしてから、あてのない一人旅の再開。




ショッピングモールの中をただ歩いてみた。



ふと視線を向けた喫茶店は、思い出の場所だった。



「はぁ」




忘れるための旅に来たのに、ここに来ると思い出してばかり。


ここでの思い出が多すぎる。




とことん思い出して、そこから忘れるしかない。





「アイスコーヒーひとつ」



私は思い出の喫茶店のカウンターに座った。




あの日のままのコーヒーの匂い。



この店の中の薄暗さが、私達にはちょうど良かった。


明るい太陽の下には似合わないふたりだったから。