DESTINY-忘れられない人-




私はトイレの前でうずくまって、トイレが空くのを待った。



手に持っていたハンドタオルが湿ってしまうほど、汗が出てきた。



せっかく買ったばかりのニット着てきたのに。


苦しくて、ブラを外す。



もうだめ。


私はトイレの前の通路にお尻をつけて座り込んだ。



冷たいよね。


明らかに具合悪いのに、誰も声かけてくれない。



こんなもんだよね。

世の中。



変に声かけて関わると大変だもんね。




トイレ……




トイレの中で座ったままでいたい。




そのまま次の駅まで運んで欲しい。




「どうされました?」




私の顔は真っ青だっただろう。


血の気が引いて、目の前が白くぼやけていた。




「ちょっと……体調が悪くて」



そう答えたとめまいがした。


私はタオルで口を押さえたまま、新幹線の壁にもたれかかった。




「大丈夫ですか。横になれる場所がありますからそこで少し休みましょう」