線の細い、縁のないめがねをかけた陽一が、お茶の湯飲みを茶托に戻しながら善吾郎を見上げた。

狭い家の中に漂っている、なんとなくよそよそしいような気まずい空気の原因が自分であることがわかっているので、陽一は陽一なりに歩み寄ろうとしているらしい。

「どこも行かん。雪ハネさしてくるだけだべ」

善吾郎は、不器用な笑顔で答えた。