「もう忘れ物したらアカンで?」



「はい…」



「ならよろしい!ほなもう行くで?」



先輩は、そう言って教室を後にした。



「…あの人って、確か…浅川先輩だろ?」



巳艶が腕を組み思い出したように問い掛ける。頷くと、若菜がバカにしたように巳艶の頭を叩いた。


また始まったな。夫婦喧嘩?…はぁ…オレ何してんだろ…姉ちゃん呆れただろうな…



先輩が見つけてオレの教室までわざわざ持ってくんのって変だろ?すると、姉ちゃんが頼んだとしか思えねーし。



「はぁ…」



「和希平気か?」



「へ平気平気…オレ丈夫だしな!」



なら良いんだけどなと言って巳艶が困ったように笑った。



心配してんだろうな。オレがシスコンだと思ってるし…本当は、好きだなんて言えねーよ。広樹は昔からカンの良い奴で、気付くのが早かったけど…



巳艶達が気付くまでオレは多分言わない。気付いたら、打ち明けるつもりだから…