あたしは玄関まで見送ることにした。

「悠斗くん、わざわざ来てくれてありがとうございました。」

そう言って頭を下げる。
すると、あたしの頭を撫でて言う。

「俺が好きでやったことだから。顔上げて?」

優しい声。ふわりと香る爽やかな匂い。

「…あ。」

顔を上げて悠斗くんを見た瞬間、 自分がすっぴんだということに気付き、両手で顔を覆った。

「どうしたの?」

「すっぴんなんですっ!」


そう言うと、悠斗くんの小さな笑い声が聞こえた。気になって左手の人差し指と中指の間から彼を覗いた。


「化粧しなくても、真澄ちゃん可愛いよ。」

「そんな…。」

お世辞でも嬉しい言葉に頬が熱くなった。

「連絡、待ってるからね。」

「しても、いいんですか?」

そう聞くとニッコリ笑顔を向けた。

「当たり前じゃん。だから教えたんだよ?俺も、暇な時連絡するから。」

ぽんぽんとあたしの頭を優しく叩いて、家を後にした。

爽やかな、残り香を残して。