「もう本当にありえない!何アイツ、何様のつもり?!」


ここはサッカー部の部室。
マネージャーな私は1人ボール磨き中であって、彼氏に苛立ち中でもある。


「作田先輩、どーしたんですか?」


ふと後ろから聞こえた声はサッカー部の1つ年下の後輩、仁くんだった。


「仁くん!ねぇ聞いてよ!もう本当にアイツってば、ありえないの!」

「アイツって龍也先輩ですか?また喧嘩したんですか?」


仁くんは呆れた顔でこちらに寄ってきて私の隣に座り込んだ。
思えば仁くんは彼氏の龍也と何かある度にこうして話を聞いてくれる。


「アイツね、私が手作りのケーキ作ってあげたの!アイツ誕生日だったから・・・。そしたら“俺さ甘いもの食えないんだよね”って!もう頑張って作ったのにありえないよ!」

「で、そのケーキは?」

「私が食べた。」


それを聞くと仁くんは、ぷっと笑い「作田先輩、可哀想な人ですね。」と意地悪そうに言ってきた。


「可哀想な人って・・・仁くん酷ヒドイよ。」

「嘘ですよ、嘘。まぁ、元気出して下さい。」

「無理だよ、だって食べてもらいたかったのに!」


結構上手にできたんだよ?
なのにアイツってば一口も食べようともしなかった。


「なら俺にケーキ作って下さいよ。」

「え・・・?何で?ケーキ好きなの?」


突然のお願いに驚く私。
そんな私を見て仁くんは呟いた。


「ケーキが好きって言うか、作田先輩が好きなんだよね。」


end