勢い良く体を起こして、要冬真の目の前で正座をした。
突然姿勢を換えたためか多少頭がクラッとしたが、目元に力を入れて彼を見上げる。
長い前髪から覗く大きな目と睫毛にこれまた違う意味でクラッとしたが、ギリギリの所で踏みとどまった。
「私がアナタと2人きりになりたくないのは!」
やべ、言いたくない。
「いいいい」
「い?」
純粋に私の言葉を待っているようすのヤツ。
軽く首を傾げる姿はなんだか可愛い。
何となく顔が見れなくて、視線をベッドの柱に移す。
「い、っしょに居るだけで…、あの、ドドド…」
「ド?」
ここからジョジョネタにシフトするのはありですか?
ありですよね?
そんな意味を込めて要冬真を覗き上げたが。
何あの純粋な瞳!
いつも偉そうな小憎たらしいオーラなのに、なぜそんな物語の続きを待つ子供みたいな表情?
しかもこいつぜってージョジョ知らねーだろ!
「ドキドキするんです!!」
もうこれはタカを括るしかないと、私は目をつむり殴りつけるような勢いで叫んだ。
「ドキドキって?」
すかさず返ってくる質問。
何!ブルジョアには“ドキドキ”が分からんか!
もっとこう貴族的な言葉で言わなきゃダメなのかな?
あああ、死んでしまう。
死んでしまうというか心臓が壊れてしまう。
新しい心臓用意しといてくんないと、そのまま息の根止まる!
「ドキドキ、いうのは…あの緊張感で、胸が高鳴ると、いうますか心拍数が、上がると言いますか…」
動悸のせいで息切れも酷くなってきた。
「俺と居ると、ドキドキするのか?なんで?」
なんでだとぉぉお!
なんていたいけな子供のように質問責めをしてくるんだコイツ!
そこは察しろ!!
感じ取れ分かるだろお前ならわかんだろぉが!
「ホントだ、すげー心臓の音」
「…」
ピトリと、左胸に感じた重み。ゆっくり胸元へ視線を下ろすと、その上には見慣れた長い指が見える。


