「じゃーふたりともバイバーイ!」
校門前で、ハルは私と要冬真に向かって大きく手を振った。
どんどん離れていく彼を片手で見送って、私も帰ろうと踵を返した所で肩に重たく痛いモノが乗っかる。
なんだか嫌な予感がして振り返ると、真顔のヤツがしっかりとそこを掴んでいた。
「要さん、何でしょう?」
「俺の家に来い」
「え?なんで?」
「拒否権はないからな」
エェー!
私の質問には答えてくれないの?
catch ball!
言葉のcatch ball!
何故野球ボールを投げたらスパイクが返ってくるわけ?
「ほら行くぞ」
「はぇ?」
首根っこを掴まれ、猫をベッドに投げ込むような軽い動作で私はやってきたベンツに放り込まれた。
「だせ」
乗り込んできた要冬真は相変わらず真顔で運転手に指示を出す。
なんですかこれ?
軽く犯罪じゃないんですか?
相手の承諾も得ずに車に放り込み家に連れて行こうだなんて、拉致監禁じゃないんですか?
つうか!
アイツんち行ったら確実に二人きりじゃないか!
「無理無理無理無理」
無駄無駄無駄無駄!
ではない。
だって二人きりになったりなんかしたら!
私!
どうしたらいいかわからん!
「あ、ぁぁぁぁあ…」
「お前なんて声出すんだ。動物と間違えられて通報されたらどうすんだよ」
動物扱いならまだいい!
いっそのこと通報して私に手錠を付けてくれたって構わない!
二人きりはダメ!
あの時(婚約会見の時)ぶりじゃないか!
ダメだよあんときだって心臓止まったんだからマジで!
「助けてぇぇぇ!」
「うるせーぞ黙ってろ」