水のかけあいから第一次魔法大戦に発展した私達の戦いは、“パルプンテ”の効果により突如現れた要冬真に一喝され終戦した。



終戦後、びしょ濡れになった私達を見て要冬真は真っ白な溜め息をついて生徒会室に置いてある貸し出し用の学校指定ジャージを提供してくれたため、体は冷えずに済んでいる。



「ったくお前ら。俺が通りかからなかったらそのまま帰るつもりだっただろ」




いえ!
そんな後のこと考えておりませんでした!



私の被害は頭と制服の上に着ていたコート。

ハルは、やっぱり頭とブレザーと、中に着用していたカーディガン。




服はそこまで酷くないが頭がな…。
どこから持ってきたのか解らないが清潔そうなタオルを渡され髪を乾かす。

要冬真は濡れた私達の衣服をジッと眺めていた。


なんだろう、あの人自分の熱視線で濡れた服を乾かしているのだろうか。

まぁアイツなら出来ても驚かないけど。



「お前達が風邪引いて外部受験者に移したらどうすんだ」




ちっ!
私の心配じゃなくて受験生かよ!


あ!世間の受験生のみなさんごめんなさい!
悪気があったわけじゃないんです!



「あんなこと言っておれ達が楽しそうだったからヤキモチやいてるんだよー」



「ふざけたこと言ってないで早く頭乾かせ」




ハルはニシシと歯を見せて笑うと、要冬真の言葉に従うように大人しく頭に乗ったタオルを動かしはじめた。

慌てて真似をするように頭を拭いていると、隣でタオルが擦れる音が止む。

気になって顔を上げると、私の事をジッと見つめる二つの目があった。



「…何?」



「来年の夏」



「来年?」



「おれ、みんなに頼んでおくからさ」



見透かしたような大きな瞳が優しげに細められる。



「学校の花、見に来よう?」




そう、奥に居る生徒会長様に聞こえないようにハルはゆっくり呟いた。




そうやって私の中の小さな不安を掬って何でもないように拭う彼は。


私の一番はじめの友達だった。




fin