個人的には卒業後、親父のラーメン屋を継ぐからこんなもの書く必要はないわけですが。



第二次進路希望表。



12月の時点で進路の決まってない生徒が書かされる用紙なわけだが、だいたいの人間は付属の大学へ行くためこんなものは必要ない。


つまり私だけ呼び出され担任に紙を渡されたわけだ。


一応前回、ラーメン屋と書いたのだが担任としては“この学校を出るんだから大学くらいはいった方がよい”とのこと。



「んなこといわれてもなぁ…」



金ないし。




私はカーペットの上にゴロリと横になり狭い天井を見上げた。

小さな部屋、一人暮らしと考えれば充分な広さ。



ふと、深月さんと過ごしたあの升条家別邸を思い出した。


深月さん元気かな…。




連絡先くらい、聞いておけばよかった。



寝返りをうって小さな部屋の引き戸を見る。
それと同時に普段からあまりならないチャイムが控え目に一度だけ鳴らされた。



寒いからコタツから出たくないんですが…。
しかし過去無視したら北斗の拳のごとく連打されたからな。




「はぁい」




仕方なしにたちあがり部屋を抜けて扉を開ける。




「こんにちは」




「え?はぁ…こんにちわ」



扉の向こうで深々と頭を下げたのは見たことのないオジサン。
なんだ?セールスか?




「あ、ごめん誰だかわかんないよね。升条鈴臣、君のお母さんの兄です」



「え?」


優しげな目元に、黒い髪。短く切りそろえられており顔にはシワ一つ見られない。

母の兄ということは結構年行ってると思うんだけど、ヘタしたら30代後半に見える。



しかしながら升条、の名前に驚いて骨髄反射的に背筋を伸ばすと鈴臣さんは少し困った顔をして頬を掻いた。



「ちょっとお話がしたいんだけど、いいかい?」


「あ、はい」


「じゃあレストランにでも…」



「いや!あの…」




「よろしければあがってください…」



高級レストランなんかクソクラエだ!
アウェイよりホーム!断絶ホーム!