「だから、何度言ったらわかるんだ。野菜は残すなって言ってるだろ」
「だって!やさいきらい!だいたい、やさいしかないんだから残したって言わないもん!手をつけないだけだもん」
「お前そんなこと言って昨日の昼もピーマンのこしてただろ調理実習のとき」
「!!なんでしってるの!」
「バレバレだ、とにかく食べろ。キュウリくらい食べられるだろ」
「ふぐっ!」
数日後、生徒会室に大量の野菜が送られてきた。
野菜が送られてきたというか、園芸部がビニールハウスで栽培した野菜を野菜スティクにしただとかでハルが持ってきたもの。
なんでも、園芸部一同からのお礼だそうだ。
よくわからないが、野菜スティクは中々おいしい。
それより問題なのは私の向かいで半ば無理やり海ちゃんに野菜を食べさせるユキ君。
鬼畜。
お母さんと子供のような会話。
なにかと怒鳴りつける傾向がある要冬真に対して、ユキ君は淡々と話すものだから前者の数倍怖い。
何となく目のやり場に困って生徒会長椅子に視線を移すと要冬真がトマトをマジマジと眺めている。
なんで?
なんか哀愁ただよってるんですけど。
会えない時間が愛育てるのさってか?
よろしく哀愁。
海ちゃん取られて寂しいのだろうか。
そう一瞬考えただけなのに、胸がチクリと痛む。
「なんだよ、トマト食べたいのか?」
「いや別に」
「そうか」
要冬真はそう言うと私からまたトマトに視線を戻す。
それから思い出したようにまたこちらを見て綺麗な指先で小さく手招きをした。
二人の喧嘩声が遠くなる。
「今回は助かった」
改めてお礼を言われても…
「いや…説得したのあんたじゃん」
彼は小さくまばたきをして椅子の隣に立つ私を見上げた。
「全然素直じゃないだろ、海のやつ。慧の気を引きたくてどうでもいい男と出掛けてみたりな。初めてだと思う、本人を前にして本音を口にしたのは」


