「…」
無言の圧力。
デフォルトで不機嫌そうな表情の雪くんは普段通りに彼女を見下ろしている。
二年生の教室が続く廊下で、下校する通り過ぎる生徒達に逆らって立つ二人はイヤに目立っていた。
雪くんの頬に付けられた傷はすっかり薄くなっており、あの時から大分時間経っている事がうかがえる。
未だに下を向いたままの彼女の背中を私達は階段の隅から見守っていた。
「なに?」
普段通りな声色。
沈黙が痛々しく突き刺さる。
いやぁ、ありゃ怖いだろ。
「ごめんなさい」
やっと顔を上げた海ちゃんは、小さくともはっきりとした口調でそう言った。
こちらからは彼女の顔は見えないが、きっと強張っているんだろう。
彼女にとっては大きな進歩なのだから。
「なんで?」
なんで!?
ここでそれを聞きますか!?
鬼畜!鬼畜な男!
「だ、って…」
「うん」
「ほっぺにきずつけちゃったし」
「うん」
「勝手に怒ってワガママしたから…」
「それだけ?」
気まずそうに視線を落としていた海ちゃんは、ユキ君のさらなる鬼畜発言に弾かれるように顔をあげる。
こちらから見る彼は依然無表情だ。
「えっと…」
「俺のこと避けたでしょ」
「あ…」
「悠のワガママなんていつものことだろ。なんで避けてたんだよ」
「だ、…ごめんなさい」
「ちゃんと理由を言ってくれないとわかんない」
少しだけユキ君が笑ったのが分かった。
「怒るってことは、俺にも非があるってことだから」
大人!
私より!
こいつ(要冬真)より!
「んだよ」
「いえ別に…」
思わず見上げると、要冬真は嫌な顔をして私を見下ろしている。
「慧、お前より大人だな」
「こっちのセリフだ」
「俺は大人だろ。どう考えても」
「はぁ!?どこが…」
「煩ぇな静かにしろ」
無言の圧力。
デフォルトで不機嫌そうな表情の雪くんは普段通りに彼女を見下ろしている。
二年生の教室が続く廊下で、下校する通り過ぎる生徒達に逆らって立つ二人はイヤに目立っていた。
雪くんの頬に付けられた傷はすっかり薄くなっており、あの時から大分時間経っている事がうかがえる。
未だに下を向いたままの彼女の背中を私達は階段の隅から見守っていた。
「なに?」
普段通りな声色。
沈黙が痛々しく突き刺さる。
いやぁ、ありゃ怖いだろ。
「ごめんなさい」
やっと顔を上げた海ちゃんは、小さくともはっきりとした口調でそう言った。
こちらからは彼女の顔は見えないが、きっと強張っているんだろう。
彼女にとっては大きな進歩なのだから。
「なんで?」
なんで!?
ここでそれを聞きますか!?
鬼畜!鬼畜な男!
「だ、って…」
「うん」
「ほっぺにきずつけちゃったし」
「うん」
「勝手に怒ってワガママしたから…」
「それだけ?」
気まずそうに視線を落としていた海ちゃんは、ユキ君のさらなる鬼畜発言に弾かれるように顔をあげる。
こちらから見る彼は依然無表情だ。
「えっと…」
「俺のこと避けたでしょ」
「あ…」
「悠のワガママなんていつものことだろ。なんで避けてたんだよ」
「だ、…ごめんなさい」
「ちゃんと理由を言ってくれないとわかんない」
少しだけユキ君が笑ったのが分かった。
「怒るってことは、俺にも非があるってことだから」
大人!
私より!
こいつ(要冬真)より!
「んだよ」
「いえ別に…」
思わず見上げると、要冬真は嫌な顔をして私を見下ろしている。
「慧、お前より大人だな」
「こっちのセリフだ」
「俺は大人だろ。どう考えても」
「はぁ!?どこが…」
「煩ぇな静かにしろ」


