「話はわかったが、おまえは事情を知ってるんだろ?ちゃんと教えてやればいいじゃねーか」
要冬真は、腕を組んだまま熊葛くんを見た。
ずっと黙ってるから聞いてないのかと思っていたが、しっかり聞いていた様子だ。
「面白いから黙ってます」
口元目元を変えず、彼はニコリと笑った。
「でもそちらもお困りのようだったので」
「そっかーシバありがとう!」
「いいえ、そろそろ蘭が勘違いに気付いて動揺する姿が見たいと思っていたんで」
失礼します。
そう加えて熊葛くんは去っていった。
彼が姿を消してから、冷気が入り込み冷え切った生徒会室に気付いて窓を閉め要冬真は生徒会長椅子へ、私達はソファーに座る。
「んじゃあほっとけば、ちゅーかあの“蘭君”の誕生日過ぎれば、あの二人は元に戻るんやな」
「そっか」
「ならあんまり引っ掻き回さん方が得策やな」
右京はグッと背伸びをして、立ち上がりそれからさり気なく、俺次移動教室じゃけ先行くな。と言って部屋から出て行った。
あ!
さり気に要冬真のお咎めから逃げてんじゃねーよ!ふざけんな昼休みの残り10分間私はあんたの分まで怒られるんかい!
ていうかすっかり忘れてたー!これから恐怖の時間が!
「このまま自然解決ってわけにもいけねーだろ」
「え!あ!いえ!自然に流せばいいんじゃないかな!」
怒られたくない!
「ワガママばかり言って周りを困らせるようじゃ、俺達が卒業した後この学校を任せられねぇ」
あ、海ちゃんの事か。
私は今更ながらにその事に気付いて、辛うじて返事をすると何事もなかったかのように彼は立ち上がり生徒会室のドアに手をかけた。
「ほら、行くぞお前ら」
「はーい」
「はーい」
そうだ、私達はもうすぐ卒業なのだ。


