細められた目元は、愛想が良さそうな印象で短く切られた髪は清潔感さえ感じる。
身長は要冬真に近いほど高い。
私達を笑顔で眺めながら、彼は落ち着いた口調で話し始めた。
「僕、二年園芸部の熊葛紫(くまつづら-むらさき)と言います」
「初めまして」
「初めまして」
バカ正直に答える私と右京を妙な目つきで見下ろした要冬真は、黙って熊葛くんを見ている。
「皆さんが観察していたあの二人とも腐れ縁というか部員仲間なんですが」
背後では先程の女の子が、男の子にくっ付いて園芸部の部室に入っていく所だった。
「困ったことがありまして」
わらったままの表情で、あまり困った様子のない熊葛くんはそう言った。
「えー!あの二人なんかあったのー?」
おれ全然しらない!とハルが眉尻を落として不服そうな顔をあげる。
「あいつ…、蘭は元々あまり人とは関わらないタイプで愛想も最悪、基本無表情、花を見る時だけ笑顔になると言う変態男なんですが…」
ひどい!
爽やかな笑顔で結構エグい事言ったよこの人!
「最近、心境の中で変化があったらしくて」
「シィちゃんのことー?」
「はい」
ハルは合点がいったという表情で、熊葛くんの返事を聞くと嬉しそうに笑った。
“シィちゃん”というのは、さっきの女の子、それでユキくんと親密げだった子だ。
「先にネタばらしをすると、もうすぐ蘭の誕生日で彼女が誕生日プレゼントに悩んで数少ない男友達に相談しているわけなんですが」
「あー、その“数少ない男友達”が樫雪くんなわけや」
「そうなんです、でも蘭ったらなんか勘違いしているみたいで、ここ一週間機嫌が最悪なんです」
そうか!
だから女の子の抱擁をあんな冷たく避けたわけですね!
つまり、なんとなく生徒会二年組の状況と似ているわけで。
これは最速で解決せねばならない。


