「アホー!仲間やろ!俺を助けりぃ!」
「身を犠牲にしてまであんたを助けたくないわ!」
「いやいやいや、俺は殺される!鈴夏は…鳴かされる?」
「は?」
急にまじめな顔で首を傾げた右京に釣られて首を傾げると、辺りに妙な空気が流れた。
「おいこらお前ら、逃げられると思うなよ」
イヤァァァァァ!
言い争いに夢中になって忘れてた!
私と右京は、言葉も交わさず無言で叫んだ。
背景にベタフラッシュ的な雷の描写があるに違いない。
とにかく、般若のような仁王のような後光の射す(ただの逆光)要冬真に睨まれたカエルいやミジンコ、このままじゃ塵と化す!!
そんな瀕死の私達の背後からドアノブが動く音がした。
神!!
神に違いない!
とにかくなんでもいいからこの空気をどうにかしてくれ!
「あれー、なにしてんのー?」
クソ!
役に立たないマスコットみたいのが来やがった!
私と右京のシンクロ率はハンパなく、ドアが開く音に対して輝かしい笑顔で振り返り入ってきたハルを見た瞬間何かを諦めた。
「どっかにさー、おれがこないだ買った種があると思うんだけど」
「種?」
ソファーの周りをうろつくハルに要冬真が声をかけた。
「あー!そいや桝古くん園芸部やんな?」
右京が希望を見つけたような表情でハルに近付き両肩を叩く。
「そうだよー」
「シィ!知っとるやろ?」
「シィちゃん?うん、今中庭にいるよー」
ハルの言葉を聞いたとたん、右京は確信めいた表情に変わり私を振り返った。
「え、何そのどや顔」
気持ち悪い。
とは言わなかったが。
「生徒会長さん!」
「んだよ」
相変わらず不機嫌にしわを寄せる要冬真に怯みもせず、右京は私達全員を窓際に誘導した。


