生徒会長様の憂鬱





よくよく考えば私と右京は海ちゃんの為に一肌脱ごうとあの場所にいたわけで怒られる由縁もなにもないことに気がついたのは、生徒会室の生徒会長用机の前に二人して正座を強要された時だった。



「…ちょっと右京、私達悪くなくね?むしろ讃えられるべきなのに何故正座?」


要冬真に聞こえないように小声で隣に話しかけると、右京は一点に前を向いたまま口を開いた。


「いや、俺が悪いねん。ちょっと前から少し過保護やとは思っとったが、ありゃあ…」



チラッと目だけで私を見た彼の表情は憂いに満ち溢れていた。
なんか、可哀想がられてる。



なんで。



「いつでも余裕たっぷりで動じない男って感じやのに、鈴夏、一生離してもらえんかもしれんで」



「は?意味がわかんな――…」




「おい」




コソコソと話していたのが聞こえていたのか聞こえてないかは定かではないが、マヒャドのような凍てつく声色に思わずメラゾーマを唱えて相殺したくなったがそこは堪えて。


椅子から私達を見下ろす生徒会長様は、大変恐ろしく見えた。逆光で表情が見えないのが救いだ。



「えーっと!海ちゃんの様子が変だったじゃないですか、右京と一緒に様子を見に行ったんです!ね?」



「そうです!そうしました所樫雪君と親しげに話す女生徒を見つけまして、右京さん感づいてしまったわけです!これは大きな収穫ですよ旦那!」



何キャラ?


右京はカタコトな標準語をまくし立てるように要冬真へぶつけた後、突然立ち上がり敬礼をした。



「では!私右京退散いたします!詳しい報告については鈴夏隊員からお聞きください!」



「待てゴルァ右京貴様!私にだけマヒャドを食らわせるつもりか死ぬぞ!」


白々しい右京の膝下に蹴りを入れてやると、声にならない声を上げてまた彼は膝をついた。