生徒会長様の憂鬱





「なんでわざわざ屋上に待ち合わせてここなの」



昼休み屋上へ向かうと案の定、だが意外にもそこへ出る踊場に腰を下ろしていた右京を見つけ、誘導されるままにやってきたのは三年生の教室の一階上、二年生の教室が並ぶ三階。

待ち合わせ場所を告げずとも大体分かってしまった自分が気持ち悪いがまぁ無視するとして、わざわざ三階に来るのに屋上を介した理由は謎だ。



「ええから、樫雪くんとかって何組なん?」



「えーっと、B組」



とりあえずなにか考えているようなので彼の後に続いて灰色の髪を追いかけていると、目的地であろうB組の教室の前で立ち止まる。


右京は振り返ることもせず、後ろの扉から漏れる騒音に紛れて顔を覗き込んだ。



怪しい。



学年の違う見知らぬ人間が無言で教室を覗いていたら怖いだろ。
私はやらんぞ。


右京の怪しい背中を眺めていると彼が振り向き、数回手招きをした。
仕方なしに隣に立ち室内に顔を出すと見たことのない生徒が沢山、弁当を食べたり雑誌を読んだりと、それぞれの時間を過ごしている。



右京の言わんとすることがいまいち理解できず顔を上げると、彼は顎で教壇を指し示した。

追うように視線を投げると、そこに見えたのは見覚えのある金の髪。


隣には赤みがかった長めの髪が並んでいる。


まぁ、知らない人とユキ君が話をしている、そんな構図だ。




「多分あれやろ、原因」



「え!ユキ君と知らん人が話してるだけじゃん」



「アホやなぁ、親密そうやろどう考えても…」



私を呆れた顔で見下ろしてから二人に視線を戻した右京は、思い出したように口を止めた。


「あ」


慌て教壇前を見ると、ユキ君達はいつの間にか居なくなっている。



「どこ行った?」



「廊下や廊下、それよりアイツ…なにやっとんねん」



「アイツって?」



「樫雪くんと話してた女の子、シィやった」



「…」



“シィ”って誰。



「セフレ?」



「ちゃうわ!ちょっとした知り合いや」