甘い声が外部から音が入り込まない防音室に、静かに響き渡った。
彼からの言葉は二度目なのに、同じくらい。いや、それ以上に胸が締め付けられるように苦しくなる。


いくら息を吸っても、楽にはならない。




「俺と、一緒に居ろ」




傲慢な態度なのに、耳から全身に走る痺れに声が出せなくなった。

嬉しいのか、何なのか自分でも判らなくなる。

何か言わなければと開いた口を遮るように落ちた影は、唇に甘い音を残して離れていった。




「付き合えって事だ」




長い指が私の頬を流れて離れていく。




「…。…うん」




ようやく絞り出した言葉は、私らしくない弱々しい声だった。
その声にまた恥ずかしくなり顔を落とすと、視界の隅に見えていた要冬真の手があらぬ方向に伸びた。



そして。



この空気に不釣り合いの高い音が響き渡る。
不思議に思いその先を追うと、彼の指先はスイッチをオフにしたところだった。




「…ん?」




なんのスイッチ?ピタゴラスイッチ?




その上のランプは消えており、マイクの電源が切れた事を示していた。




「マイク…」




「これで証人多数だな、誰にも文句は言わせねぇ」



「は!?」




は!?
マイク?オン!?オフ!?今しがたオフになったということは、今までは?




「ああああああ!あんた!」



「今までの会話全部だだ漏れだが?」



スイッチから手を離して何食わぬ顔で私から背を向けた要冬真は、防音室で反射する私の叫び声をモノともせず顔だけで振り返る。



「お前だって、みんなに聞いて欲しくて言ったんだろ?」



「違うわボケ!」



いや、確かに掟を守らないととは思ったけど…!

全てを冷静に振り返ると信じられないくらい!


「恥ずかしい!」



「お前以外集まってんだ、早く帰るぞ」



「どこに!?黄泉の国に?大歓迎ですもう戻りませんから!」


「生徒会室に決まってんだろバカ」





fin