それから数時間の後、伊勢へと辿り着いた透達は意外な人物と遭遇した…。


「はぁ〜い坊や、やっぱりここに来て当たりね。」


「え!?み…命さん!!」


そこにいたのは一度見たら見間違えるはずがない妖艶な美女だった。

彼女は透達を見下ろす形で木の枝に腰をかけ、足をプラプラさせながら微笑んでいた。


「京都から急に居なくなっちゃうんだもん。寂しかったわぁ。」


口元に人差し指を当ててパチリとウィンクした命に、沙綺の目は一瞬にしてハートマークに変わった。


「おお、女神がいるぞ!」


「何バカなこと言ってるのよ。相手は九尾の狐よ!?油断して鼻の下伸ばしてんじゃないわよ!!」


忍は沙綺の足を踏みつけると、命に向かって指を差した。

その様子を楽しそうに見つめる彼女へ、透は当たり前すぎる質問をぶつけた。


「命さん、貴女は何か事件がある前に必ず俺達の前に現れる…。ここにいるのも何か訳があるんですね?」


息をのんで見つめる透に頷き返した命は、そこから見える景色を楽しみながら答えた。


「残りの器は後一つね…。道と言った方が分かり易いかしら?」


「器?…神器の事ですか?あれが道?何の事です?」


命は自分が知らない事を知っている。
透は直感的にそれが事実なのだと感じた。