「何ですか?その破魔弓って。破魔矢なら神社に売ってるの見ますけど…。」


不思議そうに問いかけた透に、幹矢はサラリと答えを返した。


「破魔弓かい?その弓には邪気を打ち払う力があって、弦を鳴らすだけで悪霊が逃げ出すとも言われてるんだ。
当然破魔矢を射るという使い方がメインだけどね。
約千年ほど前の戦いで鵺に傷を負わせたのも破魔弓と破魔矢だと言われているんだよ。」


「え!?そんなに古い物がまだあるんですか!?」


透は夢で見た時代から現代まで残っているのかと、にわかに信じられない心境だった。
だが幹矢は軽く横に首を振って、その意見を否定した。


「まさか。そんなに古くはないよ、せいぜいお侍さんが居た頃の作品だと思うよ?
凶祓いの一族も歴史が長いからね、そのうちの誰かが残した物だろう。」


そう言って幹矢は月読が来るのを待った。
…そして二杯目のお茶を啜り始めた時に月読が長い袋を携えてやって来た。おそらくそれが破魔弓なのだろう。


「待たせたな。これだろ幹矢?随分埃がかかっていたけど状態は申し分ないだろう。」


月読は弓を幹矢に手渡しながらそう呟いた。


「ああ、間違いない。この弓だよ、すまないね月読。…これを持って行くといい。手ぶらよりは戦力になってくれるはずだ。」


幹矢はテーブルの上に弓を置くと、双子の召喚士に向かって言った。
どちらに言ったのかわからないのは、弓が2セット無かったからだろう。
どちらも使いきれないなら与えても意味はないのでは?と透は思った。