一方、時を同じくして三種の神器の二つを揃えたスサノオは、その力によって玄奘のかけた限定空間の封印を解き、現世に姿を現していた。

目を閉じて久々に外の空気を吸い込んだスサノオは、風神達が出入りに使っている廃ビルから、街並みをゆっくりと見渡した。

封印された二十年前には何も無かったこの場所も、いつの間にか新興住宅が建ち並び、今では大分様子が変わっているようだ。

この廃ビルもいつかは取り壊されるであろうが、スサノオにとっては何の感慨も感じることは無かった。


「…人間というのは不思議なものだ、誰から学ぶわけでも無いのに次々と新たな物を生み出す。
それこそ他の生物とは比べものにならないほどの速度でな…。」


以前は、見渡す限りに優雅な大地が広がり、自由気ままに動物達が駆け回っていた…。
命の糧を繋ぐ以外の殺生は無く、人間は動物や自然と対等に暮らしてきたのだ。

人間達が神という者の存在に気付いた頃、彼等は五穀の豊穣を祈り、天災が起こらないようにと神に願っていた。

スサノオはそんな人間達を愛しており、自分に出来る事を叶えてやりたいと思う神だったのだ。


しかし…。


「人間達よ…これだけの進化を遂げる能力がありながら何故気付かなかったのだ?
お前達には聞こえないのか?…この大地が痩せゆく破滅の音が!無駄に息絶えてゆく動物達の叫びが!」


スサノオは眼下に広がるネオンの海を憎らしげに見つめた。