芳雄は家事を苦手としていなかったから、不在の時に掃除や洗濯をしてもらうようなこともないし、家で料理をすることも少なかった。

別に茉莉花は料理が不得意なわけではないのだが、特に手料理を食べさせたいと思っているわけではなさそうだし、芳雄が料理をするのでキッチンを使うのを遠慮しているようだった。


改めて考えてみると、茉莉花はなかなか遠慮がちな方だ。

思えば、すごく感情を剥き出しにしているところなど見たことがない。


以前、大声で店員に怒鳴るクレーマーのオヤジを見て、

「大人の男性はどんな時でも紳士的であって欲しいよね、」

冷静に言っていたのを思い出した。