「悩んでる事…って?」


茉莉花は戸惑った。
加藤は常にあまり感情を表に出さず、穏やかな男で、自分自身の話すら、あまりしているのを見たことがなかった。

なのに、悩んでいることがある、と言い出した加藤は、今までに見たことがない表情をしていた。

茉莉花は、この時はじめて、加藤の何も知らなかった事を知った。


「良かったら、晩飯付き合ってくれない?
昨日の今日で、嫌じゃなかったら。」


加藤のことを知り、できれば救ってあげたい。


一瞬芳雄のことが頭をかすめたものの、それと同時くらいに頷いている自分を、至極当然のように感じていた。