「ごめん、待たせた?」
指定した店の前で香織は待っていた。
「久保田さん、遅いーっ。」
いつ見てもやたらキラキラと輝く唇を尖らせ、拗ねてみせる香織は、まあフリーだったら騙されてやってもいいかと思うレベルではある。
「中で待ってて良かったのに。」
「一人で中でなんて待てませんっ。さあ、はやく入りましょー!」
店は芳雄が選んだ。
香織がどういうつもりであろうが、会社の人間にあまり見られて無駄な噂を立てられるのはごめんだったから、少し離れてあまり他の客が見えない店にした。
「久保田さん、来てくれてよかった。」
香織がぽつりと言う。
「話って何か相談?」
「いえ、わたし前から久保田さんとお話したかったんです。
でもなかなか接点なくて、このままじゃチャンスないから…。」
香織が上目遣いで見る。
「なんで俺を?」
「理由が要りますか?」
面倒だな。
「いや、俺、彼女いるから、」
「知ってます。」
まあ知っていてもおかしくはない。
別に隠してるわけじゃなし。
「彼女のこと好きですか?」
「好きだよ、もちろん。」
「はっきり言いますね、だけど、わたしそれでもいいです。」
意味がわからない。
芳雄が回答に困っていると、香織が長いまつげをゆっくり揺らしてから言った。
「わたし、久保田さんが好きなんです。試してもらいたいの。」
指定した店の前で香織は待っていた。
「久保田さん、遅いーっ。」
いつ見てもやたらキラキラと輝く唇を尖らせ、拗ねてみせる香織は、まあフリーだったら騙されてやってもいいかと思うレベルではある。
「中で待ってて良かったのに。」
「一人で中でなんて待てませんっ。さあ、はやく入りましょー!」
店は芳雄が選んだ。
香織がどういうつもりであろうが、会社の人間にあまり見られて無駄な噂を立てられるのはごめんだったから、少し離れてあまり他の客が見えない店にした。
「久保田さん、来てくれてよかった。」
香織がぽつりと言う。
「話って何か相談?」
「いえ、わたし前から久保田さんとお話したかったんです。
でもなかなか接点なくて、このままじゃチャンスないから…。」
香織が上目遣いで見る。
「なんで俺を?」
「理由が要りますか?」
面倒だな。
「いや、俺、彼女いるから、」
「知ってます。」
まあ知っていてもおかしくはない。
別に隠してるわけじゃなし。
「彼女のこと好きですか?」
「好きだよ、もちろん。」
「はっきり言いますね、だけど、わたしそれでもいいです。」
意味がわからない。
芳雄が回答に困っていると、香織が長いまつげをゆっくり揺らしてから言った。
「わたし、久保田さんが好きなんです。試してもらいたいの。」


